ト書きのない文学 年末ロングヴァージョン 資質

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#1 新人「課長、では今年一年、お疲れ様でした。乾杯!」 課長「乾杯。一年は早いねぇ。肛門矢の如しだ」 新人「光陰です。相変わらず課長、バカですねぇ」 課長「君も相変わらず歯に羽衣を期せぬ男だな」 新人「羽衣じゃなく、いやもういいや。スタートからこれじゃ、後半のツッコミが持たない」 課長「それにしても、一年とはよくできてるね」 新人「何がですか」 課長「毎年、きっちり365日なんだよ」 新人「うるう年意外はそうですね」 課長「そうか、うるう年は・・・300日くらいだったっけか」 新人「366日です」 課長「へぇ、そうなんだ。博識だね、根本君」 新人「常識です。それにしても課長、よくそれで課長になれましたよね」 課長「うん、バカ課長って言われるのもよくわかる」 新人「認めてるんですね。悟りの境地だ」 課長「私はね、君にみたいにズケズケものをいう人間が好きなんだ。今年入った新人とは思えん」 新人「2年目です」 課長「はやっ!飛び級した?」 新人「着実に、2年です」 課長「そうかぁ。光陰嫌の如しだな」 新人「ツッコまないぞぉ」 新人「課長に一度聞きたいと思ってたんですが、いいですか」 課長「何でも聞いてくれ。答えたくないもの、答えにくいもの、飲んでるとき、食べてる時、トイレに行ってここにいない時以外、何でも答えるよ」 新人「答える気なし。えーとですねぇ。なんで、一年中、海パンだけ履いての出社なんですか」 課長「気づいたのか」 新人「気づきたくなくても、もう全社あげての疑問です」 課長「根の本と書いて根本君」 新人「ご丁寧に」 課長「ひとつ質問だ。もし、出勤途中、川で子どもが溺れているのを見たとしよう。君ならどうする」 新人「たぶん、考える前に川に飛び込んでるでしょうね」 課長「その通り!ワンポイントゲットだ。ちなみに1ポイント1円換算だ。がんばれ!」 新人「ありがとうございます。大事に使います。で?」 課長「私も、身を挺して飛び込むだろう。もうこれでわかったろう」 新人「え、ええっ?もしやそのために年中、海パンのみで出社してるんですか!」 課長「一刻一秒が命の分岐点になる。ズボンを脱ぐ時間はない」 新人「えーと、背広とかシャツ、ネクタイは?」 課長「鋭い質問だね、さすが世界的名探偵、根本だ」 新人「お恥ずかしい限りです」 課長「実はこのスーツ、シャツは特注でね。舞台とかでよくスパッと衣装を脱ぐやつあるだろ。この背広とシャツは両サイドに引けば真っ二つに分かれ、1秒もかかからず脱げるのだ」 新人「ネクタイは?」 課長「ネクタイは残念ながら私の場合、特別な結び方をしているので、解くまで小一時間かかかるので、そのままだ。泳ぐのにたいして邪魔にはならん。ちなみに靴下も同様に特殊な履き方をしているのでそのままだ」 新人「う、うーん、ツッコミたい!が、やめときます。ってことはですよ、無事に子どもを救ったとして、裸にネクタイ、海パン、靴下って格好で報道されますね」 課長「なるね」 新人「たぶん新聞の見出しは・・変態、子どもを救う」 課長「なるね」 新人「いんですか。会社としても問題になるのでは?」 課長「君の言う通りだ。考えてもみなかった」 新人「ちったぁ考えろ」 課長「よし、決めた!海パンも履かずに出社しよう!」 新人「家出た瞬間、逮捕です」 課長「君は私のを見ていないからそんなことを言うんだ」 新人「永遠に見せないでください」 課長「私のは、ナノサイズなんだ。だから・・・大丈夫!」 新人「サイズの問題じゃ・・え、ナノ?!」
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