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もしそうだったとしたら、私じゃなくて彼女が受かってたのかもね。きっと彼女は私よりも社交的で人に好かれて、仕事もできる人だったのかもしれない。
運命って残酷ね。人でなしの私じゃなくて、社会のために動ける彼女が命を奪われてしまうんだから。
人でなしの私の命は、誰も奪ってくれないのだから。
†
「キャハハハ!」
突然の笑い声に、びくりと震える。
「アッハッハッハ! うふふふ! アーハッハ!」
小夜子は気が狂ったように笑う。大人しい静かな小夜子が、めったにしない笑い方だった。
「はーあ」
小夜子の前にある茶碗には、まだ半分ほどご飯が残っている。小夜子はもう、箸を置いていた。
「おかしいと思わない? 美人で人生楽しむはずだった彼女が死んで、愚鈍で役立たずの私はまだ生きているの。どうしてあの男は私を狙わなかったの? 死ぬべきなのは、私のほうなのに」
私は返事をしない。残り少ないスイカを、種をよけながら食べていく。
「あのときの私は、普通の生活を送れない自分が嫌だった。異常者だと思われるのが嫌で、普通の職を求めてた。そんなことしたって自分が異常なのは変わらないのにね」
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