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「おまえに話しても、きっとわかりゃしないよね。これはただの、私の自己満足。私がただ話したいだけ」
彼女の口から放たれる穏やかで陰鬱な声。その声だけでもう、彼女の心の闇を感じ取ることができた。
†
私が、美大生だったころの話。
あの頃の私は……いいえ、昔からずっとそうね。私は、だれかと一緒にいることが苦手だったの。
だれかと一緒にいるほうが、病んでしまう。だから、いつも一人。
今でこそ、このままでいいと思えるのだけれど、そのときはまだ、一人じゃダメだって思ってた。
周りに話題を合わせたり、はやりのものを追ったり、人づきあいに関する本を読んだりね。……それなりに、頑張ってたと思う。
でも、うまくいかなかった。みんなに合わせて笑みを浮かべる中でいつも不安だった。群れの中になじめない私が、ずっとおかしいんだって思ってたの。
……でね。その日は、急いでたの。授業が長引いちゃってたから、このままじゃ友達と遊びに行く約束に遅れそうだった。
校舎の出入口から出ようとしたんだけど、足が止まった。だって嫌な予感がしたから。
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