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出入口の先には誰も通らないスペースが開いて、その先で学生たちがスペースを囲むように集まっているの。
誰もが上を向いていた。スマホを上にかざしている人もいた。なにを言っているのかわからない声が響いていた。
このままじゃ約束に遅れちゃう。そう思うとなんだかいら立たしくなって。もうこのまま外に出ようかと、足を踏み出したときだった。
湧き上がる悲鳴。なにかが出入口のひさしにあたった鈍い音。
そのなにかは、開いていたスペースに、べちゃりと落ちた。
進まなくて正解だったの。私が、巻き込まれていたかもしれないから。
地面におびただしく広がっていく、血。血じゃないものも、頭から流れてた。
……飛び降りだったみたい。集まってた人たちも言ってた。
でもね、私がそのとき思ったのは、嫌なものを見てしまったとか、かわいそうとかじゃなかった。
こんなとこにいる場合じゃない。はやく約束してた場所に行かなきゃ。……だった。あの人の血が飛び散って、私の服につかなくてよかった、とも思った。友達になんて言われるかわかんないから。
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