60人が本棚に入れています
本棚に追加
3月16日
初詣には行ったし、春高バレーってやつも見に行った。ならんで座った観客席で俺の質問攻めにうざったそうな顔で答えるユウに、なぜか俺はきゅんとしたんだけど。
あとは試験前の図書館通い。書店で参考書を選んだ。
ただの高校生の放課後じゃんっ。
3月14日は過ぎた。昨日だった。ホワイトデー。
ユウは窓際に椅子の背を向けて座っている。
俺はその後ろの席で、シャーペンを尖らせた唇の上に乗せている。
「早くしないと、正門閉まっちまうぞ」
「………。」
べし、とか、まし、とか、俺になんの関係があんの。古典は苦手だ。今日中に提出しろと言われたプリントは、遅々として進まない。進める気もない。
「ねーえ、ユウ」
「あー?」
俺は課題を放り出してつと立ち上がる。机を回り込んで、ユウの膝にまたがって座る。
「どっか行きたくない?」
「トイレか? 待ってるから行って来い」
「ちーがーうっ」
トイレだったらひとりで勝手に行くよ!
「そうじゃなくてさ」
首に腕も回してみる。
「くっつくなよ…」
眉間に軽くしわを寄せて顔をそらした。
ふん、そりゃあ、俺には色気もかわいげもないよ。
「アキ、ほんとに頭真っ黒になったな」
でっかい手で、髪をかきまぜる。そうだよ、もう全然染めてない。興味がなくなった。ユウが俺のことをちゃんと好きだって言ってくれてから。
最初のコメントを投稿しよう!