3月16日

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「たとえば映画とか…行きたくない?」 「観たい映画、あるのか?」 「特にないけど…」 けげんそうな顔をする。 つまり、俺が言いたいのはさあ。 「…いっつも、どっか行くとき、俺が誘ってるだろ」 「そうだっけか?」 春高バレーなんて、ユウがひとりで行こうとしていたところを、俺がとっ捕まえたんだからな。渋谷だよ。ワカモノのお出かけスポットだぜ? それなのにユウはきょとんとした顔をする。 「どうせ行くなら、どっちから声をかけようが同じことだろ?」 ユウは器用に背中側の窓の鍵を腕を伸ばして開ける。そのまま顔をそらして外気にあたる。いいかげん離れろよ、ともう一度俺に言う。ひねった首の、のどぼとけ。 「ち…ちがうもん」 全然、違うもん。誘うんじゃなくて誘われたいんだよっ。 どうしてわかってくれないんだよ。俺はなんだかとても自分が恥ずかしくなって立ち上がる。 「ユウのばかっ…!」 「あ、おい。アキ…」 まのぬけた声が後ろから聞こえたけれど、俺は教室のドアから走って出て行く。出て行こうとして、振り返って捨て台詞を投げつける。 「でくのぼう! 鈍感!」
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