3月16日

3/16
前へ
/34ページ
次へ
「空輝ぃ、おむかえ来たよ」 おむかえ…? 「悠陽くん。なんだかすごい荷物だったよ」 母親の声を頭の上から聞きながら、枕を抱える。 「約束してるのにまだ寝てたの。まったくもう…」 約束なんかしてない。だってけんか別れしたんだから。荷物? ねぼけまなこのまま、一階に降りる。ごめんねえ悠陽くん、と母親の高い声が階段の吹き抜けにひびく。 もしかしてノートを貸せとかそういうことを言いに来たのかもしれない。しゃあしゃあと、図太く。だとしたら、ぜってー貸さないし。 階段の最後の一段を降りたとき、三和土(たたき)に突っ立っているユウと目が合う。合ってしまう。俺は玄関脇のウォークインクローゼットに隠れて、壁から顔と体を半分だけ出す。 「…なんだよ」 「行くぞ」 「どこにだよ」 ユウは母親が言っていたとおり、大きな紙袋を持っていた。 「いっ…行かないもん。俺がいつでもユウにひっついてくと思ったら大間違い、」 「デート」 「へ………?」 目をこすっていた手が、止まる。 「ホワイトデーだろ?」 俺の頭の寝ぐせがぴんとはねて反応した…気がする。 「正確には、今日が十六日だから二日過ぎたけど」 「まっ…着替えるから待ってて!!」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加