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「空輝ぃ、おむかえ来たよ」
おむかえ…?
「悠陽くん。なんだかすごい荷物だったよ」
母親の声を頭の上から聞きながら、枕を抱える。
「約束してるのにまだ寝てたの。まったくもう…」
約束なんかしてない。だってけんか別れしたんだから。荷物?
ねぼけまなこのまま、一階に降りる。ごめんねえ悠陽くん、と母親の高い声が階段の吹き抜けにひびく。
もしかしてノートを貸せとかそういうことを言いに来たのかもしれない。しゃあしゃあと、図太く。だとしたら、ぜってー貸さないし。
階段の最後の一段を降りたとき、三和土に突っ立っているユウと目が合う。合ってしまう。俺は玄関脇のウォークインクローゼットに隠れて、壁から顔と体を半分だけ出す。
「…なんだよ」
「行くぞ」
「どこにだよ」
ユウは母親が言っていたとおり、大きな紙袋を持っていた。
「いっ…行かないもん。俺がいつでもユウにひっついてくと思ったら大間違い、」
「デート」
「へ………?」
目をこすっていた手が、止まる。
「ホワイトデーだろ?」
俺の頭の寝ぐせがぴんとはねて反応した…気がする。
「正確には、今日が十六日だから二日過ぎたけど」
「まっ…着替えるから待ってて!!」
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