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都心のシネコンは土曜日だから混雑していた。人混みのあいだをぬって、並んだポスターをながめる。
「えーとね」
萌え系アニメ、幼児向けアニメ、サスペンス、大きな賞をとったやつ、ヒューマンドラマ、アイドルが主演の恋愛もの。
「俺、これがいい」
ポスターの中では、暗い部屋の片隅に、髪が長くて白いドレスを着た少女がうつむいてロッキングチェアに腰かけている。
こわそうで面白そう。
「ホラー映画?」
ユウと手をつないだままでいた。接した部分の温度がじわりと上がった感じがしたんだけど、気のせいかな。
前の方は意外と見づらいんだ。上映までまだ時間があったから、チケット購入のタッチパネルの前であれこれ迷う。
「ここは後ろすぎるか」
「あ、ねえ、ここがいい」
後方の、他の席から少し離れたふたりずつ区切られた席。指をさしたその下の文字を見る。
「か…?」
カップルシートって書いてある!
べ、べつにそーゆーつもりじゃなかったんだけど!?
「な、なんか座りやすそうだなって、思って…」
いいわけする。俺はばつが悪くなって、抱っこしているコアラで顔を隠した。
「…でも金額もよけいにかかるみたいだし、やっぱ普通の席でいい、」
俺がぶつぶつ言っているうちに、ユウはパネルをさくさく操作してその座席のチケットを買ってしまう。
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