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連休明けの火曜日は持って行く勇気がなかったのを、まだ13日だからと言い訳してスルーした。
そして水曜日、14日。
家を出る直前に、かばんにチョコレートの小箱をしのばせた。親が用意していた箱を、一個盗んだ。水色の地に白のドット柄。だからかろうじて女々しくはないはずだ。
ユウが好きなもの。
牛乳(背を伸ばしたいんだってさ、今以上に)、ささみ(アミノ酸スコアが高い。俺には意味不明)、白身魚(低脂質で高たんぱく)。
考えてみると、チョコレートの入るすきまなんてなさそうだ。
学校の最寄り駅で、吉原先輩がS女の子たちに、まるで詰問されているみたいに囲まれているのを横目で見ながら通り過ぎる。朝っぱらから大変そうだ。
ユウはべつに、あんなふうにもてやしない。そのはずだ。でも少し不安がよぎる。前に彼女がいたし、告白されたことも、ないわけじゃない。それにたった一個だけだって、もらうことはあり得る。もしかしたら。万が一。
俺は駆け出す。早くユウに会わなきゃって気持ちになる。
「…ユウ!」
朝練を終えて渡り廊下に出て来たところをとっ捕まえる。
「アキ? どうした、こんなとこ来て」
腕に腕をからめてぐいっとひきよせる。まわりをきょろきょろと見回す。
「どした?」
「今日…なんの日か知ってる?」
「今日?」
「うん。誰かと会う約束…してる?」
「してない」
「…そう」
「アキ」
「早く教室行こ」
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