2月14日

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「こっち来い」 「や…やだ…」 俺は再びそっぽを向いて隠れる。 「こっち来い。そんなとこにいないで」 ぶんぶんと首を横に振る。 「俺は犬じゃないもん…」 ユウになついてる犬じゃないもん…。 「じゃあ俺がそっちに行く」 ユウは焦れたように言って、ベッドを軋ませて立ち上がる。カーテンをめくって俺のとなりに座った。 「もうっ…来るなよ」 なんでふたりしてカーテンの中で体操座りなんだよ。変だろ。俺はますます膝をぎゅっと抱える。 「バレンタインデーのことなんか頭になかったから、びっくりした」 「だ…誰からも、もらわなかった…?」 俺が知りたいのはぶっちゃけ、そこ。 だって嫌なんだもん。無愛想なユウが誰かに一言だって、ありがとうって言ったり、その人からもらったものを食べるだなんて。 「もらってないよ」 「…義理でも?」 「ああ」 俺はほっと胸をなでおろしてしまう、心のせまい幼なじみだ。 「予想もしてなかったから、アキがくれてうれしかった」 俺は膝にあごを乗せたまま、右側に来たユウをちらっと見る。無表情だ。いつもどおり、不機嫌そうにすら思える。 「あったかいととけちゃうから、氷水で手をひやしながら丸めて作ったんだよ…」 俺のは母親が作ったやつより大きくて不格好だった。二粒しか入らないちっちゃい箱にぎゅうぎゅうに詰めた。 ユウのために。ユウに気持ちを伝えたくて。
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