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氷水で? 驚いたように言うと、ユウは俺の右手を膝からひきはがしてにぎった。ちゃんと、俺の手が床につかないように下から包み込んで。
それだけで、先週末ユウが俺を置いて帰ったことは、もうどうでもよくなる。
俺はユウのことが好き。
「味見してないけど、おいしかったの…?」
おそるおそるユウを見上げると、目が合った。俺は一日中挙動不審だったから、今日はじめて、まともに視線が絡む。
好き過ぎて、つないだ手の温度が上がる。
奥二重の瞳は、チョコレートよりもっと黒くて、でも、澄んでる。
「ユウ…好き」
ユウは俺の言葉を受け取るみたいに、俺の唇に自分の唇をそっと乗せた。
キスはチョコレートの味がした。甘くて苦い。
「ほんとに、食べたんだ…」
「食べた。すげえ口の中に刺さったけど、アーモンド」
「………。ごめん」
ごめん。でもあれが俺の気持ちだったんだよ。とげとげしてつんつんして、でもその真ん中は不安で。
「でも、もういっこはまんまるだよ…」
もうひとつのチョコレートトリュフを指でつまんで、ユウの唇のすきまに押し込む。
もう一度、キスする。
ユウの舌の上に乗ったチョコレートはすでにとけかけていて、俺の口の中で輪郭をなくしていく。
「っん………」
ユウの首に腕を回す。もっと甘さを分け合いたくて、もどかしくなってひきよせる。ユウは俺のうしろ頭をでっかい手で抱えて、離さない。
腰が抜けそうなくらい、甘くてとろとろ。
二月の空気でひえた窓ガラスが曇って、俺たちを隠そうとする。
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