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魔王城の正門を背に立つ魔王。彼の背後には、先ほど報告に来た白髪の男を含めた三人の側近が控えている。
魔王たちが見据えるのは、魔王城の正面に広がる森。そして、そこから現れた若者たちの姿。
人数は四人。男が三人と女が一人。先頭に立つ男と彼の後ろに並んで付き従う男女は、魔王とそれほど年齢が変わらないように見える。装備は比較的軽装で、手にしている武器などから役割なども判別できる。だが、最後尾に立つ男はどう若く見積もっても三十後半。前述の彼らが二十代前半程度だと仮定すると、十以上は年齢が上だ。そのうえ装備も一人だけ重厚な鎧姿で、集団の中で異質な空気を纏っていた。
このような外見的な特徴から、最後尾に立つ男が集団のリーダーにも思えたが、どうやら実際のリーダーは先頭に立つ若い男のようだ。
彼が腰に携える剣からは、鞘に納められたままにも関わらず神聖な魔力を感じられた。おそらく、あれが聖剣。……つまり、この若者が勇者だということになる。
勇者であろう男は、降り注ぐ日差しを受け輝く美しい金髪と青空を映し込んだような瞳が印象的で、黒髪と黒い瞳を持つ魔王とは相対する存在に映る。
まるで希望と絶望を司る存在……。
誰の目にもはっきりと分かる対比。これこそが、人間族の希望の象徴として勇者を祭り上げるに為には必要なのだろう。
(私と敵対する存在として相応しい姿だな。だが、この勇者……)
まばゆい勇者の姿に何か引っ掛かるものを感じながら魔王が眺めていると、対峙する勇者も同様に魔王を見据えていた。ただ、勇者の澄んだ青空のような瞳から向けられるのは、品定めするような下劣な視線。これには少しばかり不快感を覚える魔王だったが、互いの立場を考えれば致し方ないこと、と飲み込んだ。
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