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形を持たぬ《水》の属性の魔力は、飛来する矢を幾つか破壊しながら蛇の姿へと形を変え、弓使いへと向かっていく。側近の暴挙に焦る魔王だったが、それは要らぬ心配だった。先ほどまで一歩下がった場所にいた戦士がいつの間にか二人の前に立ち、手にした大剣で魔法をいとも簡単になぎ払ってしまった。
感情的な攻撃とはいえ従者も本気ではなかった、戦士自身も事前に何かしらの魔法を武器に付与していたとも考えられる。それでも、あまりにも呆気なく四散してしまった魔法を前に、後方に控える側近たちだけでなく魔王さえ茫然としていた。そんな風に魔王達が気を取られている隙に、今度は回復役であろう女の魔道士がすかさず勇者に《強化》の魔法で低下した身体機能を回復させ、さらに身体能力を上昇させていった。
魔法の援護を受け、勇者が立ち上がる。すると、これまで視界一面に降り注いでいた矢の雨が割れ、一本の道が出来上がった。魔王と勇者、双方の瞳に互いの姿がはっきりと映る。そして、聖剣を構えた勇者が、再び魔王へと向かい切りかかってきた。
彼らは勇者パーティーとして選ばれただけあって、個々の能力は人間族の平均値よりもかなり高いようだ。それでいて能力の高さにおごることもなく、己の能力や役割をしっかりと理解し担っている。さらに、ここまでの旅で得た信頼関係も良好で、言葉などなくとも各々の判断で的確に連携が取れている。実に優秀なパーティーだ。
だが、どんなに優秀であっても、魔王討伐において後方の彼らは補佐役にしか過ぎない。
魔王と戦うのは勇者一人。
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