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『輝き満ちる青き光彩を纏いし精霊よ。青を繋ぎて、我が前に道を示せ――』
「――ま、魔王様っ! お待ちくださいっ! その詠唱は――」
背後から誰かの声が聞こえた。しかし、その声の意味に気づくこともないまま、魔王の紡いだ詠唱は放たれた。
刹那、魔王と勇者の間に目が眩むほどの青白い輝きが生まれ、二人を飲み込んだ。
◇ ◇ ◇
青白い輝きが消え、視界が戻ってくる。
「…………」
「…………」
痛みを感じるほどの静寂。真っ白な世界に見えるのは、正面に立つ男の姿だけ。
「…………えっ?」
「…………はぁ?」
男二人の間の抜けた声が響く。そして、同じように間の抜けた表情で顔を見合せる。
何か確認し合うように目配せをし、周囲を見渡す。だが、状況は全く理解できず、二人は再度顔を見合せる。
「……ど、どこなんだここはーっ!」
見渡す限り一面の銀世界に、魔王と勇者の悲痛な叫び声が響き渡った。
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