王子様

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あっという間に一年が過ぎて、中学二年生になった。 桜はハラハラと綺麗に散るけれど、私の心はハラハラと静かに怯えている。 もし、今年も友達ができなかったら。 今年も一人だったら。 今年も空気だったら。 不安は不安を呼んで、私を苦しめる。 どうしたら、友達ってできるのかな……。 できるわけなかった……。 今日は始業式だった。クラス替えもあった。 そして、 私は固まった 「もう、いやだよ……」 そんな言葉はベッドにポスンと沈む。 ベッドの上で足をバタバタした。 どうしようもないことはどうしたらいいのだろう。 諦めなければいけないことはどう諦められるだろう。 部屋の端にあるドレッサー。 私は出来心でその前に座った。 「私がキレイになって、盛り上がる話題をたくさん持って、親しげに話しかければ」 そんなの無理だ。 私には無理だ。 「お姫様になれたらいいのに……」 その瞬間、自虐で鏡を見ると、そこに私は映っていなかった。 映っていたのは、 王子様だった
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