第一章 目覚めた愛

1/10
545人が本棚に入れています
本棚に追加
/350ページ

第一章 目覚めた愛

「若頭、大変です」 慌てて俺の元に駆けつけてきたのは、冨樫組の舎弟、ヤスシだ。 「うるせえよ、何が大変なんだ」 「マンションの前に女が倒れています、しかも熱があるみたいなんです」 俺はヤスシとマンションの前に向かった。 オートロックドアの前に、確かに女が倒れていた。 抱き上げると、身体が異常に熱かった。 「おい、ヤスシ、スポーツドリンクと頭を冷やすもの買ってこい」 「はい、かしこまりました」 ヤスシは俺のお守り役だ。 年は十九だが、俺よりしっかりしていて、頼りになる男だ。 俺は三年前から、生きてるのか、死んでるのかわからない人生を送っている。 冨樫組組長、つまり俺の親父は心配して、ヤスシを俺のお守り役につけた。 「自殺されては困るからな」 親父は俺にそう言った。 人間、そう簡単には死ねない、俺は実感した。 俺は女をベッドに下ろして、タオルをしぼり身体を拭くため衣服を脱がせた。
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!