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 その翌日から、私の周囲は再び元通りになったと記憶している。彼との二度目の邂逅から帰って、複雑な想いを紛らわそうと部屋にあった缶ビールを飲んで、酔って寝た。夜が明けてから見た鏡の中には以前と同じ私がいたし、テレビの中のタレントも記憶通りの顔だった。恐る恐る外に出てみたけど、誰もが別々の外見で普段通りに振舞っていた。  そして二年が経過した今、私は再び彼の顔を目にしている。  テレビの中、顔と名前を全国に報道された彼の罪状は、詐欺罪。未婚女性に近づき、その気を持たせ、総額二千万円にものぼる結婚資金を巻き上げていた。  あの出来事は、私の目に見えない危機感が私自身に警鐘を鳴らしていたのかもしれない。私は彼の見た目が分からなければ、彼そのものも区別ができなかった。所詮私も、中身が大切といいながら、相手の外見を重視していたのだ。  やれやれ。危ないところだった。テレビを消して、バッグを手に取る。今日は休肝日だから、お酒は控えてランチに行く。心で向き合えそうなその人と、少し遠出をする予定だ。
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