惚れさせ大作戦!

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惚れさせ大作戦!

 そんなこんなで時は過ぎ。  修学旅行は間近になってきた。 「うぃーっす!」 「わ、びっくりしたー!」  俺が歩いていると、後ろから誰かが抱きついてきた。  今、恋愛テクニックの記事を見ていたのだ。 「もー、涼太か…やめろよ!」 「ごみんごみん。で、何みてんの?」 「ああっ、これは…」  俺は慌てスマホを隠した…はずだったけど⁈ 「ふむふむ。なるほどね〜!」  …背が高い涼太は、俺のスマホを奪い取ってニヤニヤしていた。  そして、俺の耳元でこう囁いた。 「日下部さんだろ?可愛いもんな」 「⁈」  バレた… 「だっ、誰にもいうなよ⁈」 「ああ。こんな面白い秘密、誰にも渡すもんか」 「そっか…」  俺は心底安堵した。 「ま、いけるんじゃね?お前モテるだろ?」 「え?俺ってモテるの?」 「まあな。お前に告ろうとしてた女子、何人もいたぞ?」 「マジで…?でも俺は日下部さん一筋だから!」 「そうかよ。んじゃ、頑張れよ!」  涼太はご機嫌で走っていった。  はぁ。今から、日下部さんに会いにいくんだ。  それだけで、胸が熱くなる。  朝から俺の心は平常心ではいられなかった。 「くーさかべさんっ!」  俺は彼女の背中に思いっきり明るく呼びかけた。 「あら、おはようございます、桜庭北斗くん」  にこりともせず、静かに。  俺を呼ぶその声が、たまらなく好きだった。 「今日は日下部さんに、プレゼントを作ってきたんだー!」  俺はカバンからあるものを取り出す。 「じゃじゃーん!チョコクッキー!」  …俺は誰にも秘密の趣味がある。  それは、お菓子作りだ。  一応調理部に入っているけど、お菓子を作っていることは誰にも言ったことがない。 「ほら、日下部さん、前に甘いものが好きって言ってたじゃん?だから、作ってきた!」 「これは…ありがとうございます。美味しくいただきますね」  日下部さんは首を傾げる。 「桜庭くんは、甘いものが好きなのですか?」  俺は少し恥ずかしさを覚えながらも頷く。 「うん。一応作れるんだ」  日下部さんは意外そうな顔をして頷いた。 「そうですか。すごいですね」  日下部さんはさらりと言う。  でも俺は真っ赤になってしまう。  「あ、ありがとう…」  照れる…。  好きな子に「すごい」って言われるのは流石に照れる! 「あ、そういえば桜庭くん」  日下部さんは思いついたように言った。 「修学旅行、私たちの班に入ってくれませんか?人数が足りないんです」 「は……?」 「嫌ですか?吉岡大翔(よしおかひろと)さんと丸山瑠花(まるやまるか)さんが一緒です。人数が足りないので入ってくれると嬉しいのですけれど」    日下部さんの言葉に理解が追いついた俺は、顔に熱が宿っていくのを感じた。   「…俺でいいのか?」 「はい。桜庭さんがまだ決まってないようだったので」  …嬉しすぎる。  日下部さんが俺を誘ってくれるなんて…っ!  俺は飛び上がりそうな自分を制御するために咳払いをして、日下部さんに言った。 「も、もちろん…まだ、決まってなかったから…いいよ。は、入る」  だが、声は上擦ってしまった。
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