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真夜中になると寒さが一段と増し、雪もちらついていた。
希望は街の外れで膝を抱えて蹲っていた。できるだけ人の会わないように、誰も関わらなくて済むようにしたかった。
ざり、と足音で顔を上げる。
雪でうっすらと白くなった地面に、黒く艶めく革靴が見えた。
誰の物かすぐに分かって、「滑って頭打って死ね」と呪うように、じっと睨みつける。
けれど、彼は――ライは、笑っていた。
「…あんた、皆に何したの…?」
「さあ? 興味がなくなっただけだろ。何から生まれてどこからきたのかわからねぇ野良犬に」
ライは希望の前でしゃがみ込むと、じっと覗き込むように見つめた。
「もしかして、いつまでも可愛がってもらえるもんだとでも思ってた?」
「…ッ…!」
希望は反論できなかった。どこの街でも、金眼や歌のお陰で悪いようにはされなかった。だから、甘えていたのかもしれない。
そのことに気付いて、きゅっと唇を噛んで、俯いた。
「……でももし、まだ飼い主が欲しいんなら、俺の部屋に来るだけで叶う」
「…!」
希望が悔しさに表情を歪めてライを睨むが、ライはそれを微笑んで受け止める。
「どうする? 首輪つけてやろうか?」
無遠慮に伸ばされた手を、バシンッと弾く。拒絶の音がよく響いた。
「……アハハッ、可愛い」
つり上がった瞳が希望の意志の強さを主張しているようで、ライは一段と楽しそうに笑った。
「可愛がってほしくなったら帰って来いよ。俺の気が変わらないうちに」
「…ッ誰が!!」
屈辱に表情を歪めて叫ぶ希望を、満足そうに見つめて、ライはまた背を向けて去っていった。
***
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