第二章 再会

16/24
前へ
/90ページ
次へ
 真夜中になると寒さが一段と増し、雪もちらついていた。  希望は街の外れで膝を抱えて蹲っていた。できるだけ人の会わないように、誰も関わらなくて済むようにしたかった。    ざり、と足音で顔を上げる。  雪でうっすらと白くなった地面に、黒く艶めく革靴が見えた。  誰の物かすぐに分かって、「滑って頭打って死ね」と呪うように、じっと睨みつける。    けれど、彼は――ライは、笑っていた。   「…あんた、皆に何したの…?」 「さあ? 興味がなくなっただけだろ。何から生まれてどこからきたのかわからねぇ野良犬に」    ライは希望の前でしゃがみ込むと、じっと覗き込むように見つめた。   「もしかして、いつまでも可愛がってもらえるもんだとでも思ってた?」 「…ッ…!」    希望は反論できなかった。どこの街でも、金眼や歌のお陰で悪いようにはされなかった。だから、甘えていたのかもしれない。  そのことに気付いて、きゅっと唇を噛んで、俯いた。   「……でももし、まだ飼い主が欲しいんなら、俺の部屋に来るだけで叶う」 「…!」    希望が悔しさに表情を歪めてライを睨むが、ライはそれを微笑んで受け止める。   「どうする? 首輪つけてやろうか?」    無遠慮に伸ばされた手を、バシンッと弾く。拒絶の音がよく響いた。   「……アハハッ、可愛い」    つり上がった瞳が希望の意志の強さを主張しているようで、ライは一段と楽しそうに笑った。   「可愛がってほしくなったら帰って来いよ。俺の気が変わらないうちに」 「…ッ誰が!!」    屈辱に表情を歪めて叫ぶ希望を、満足そうに見つめて、ライはまた背を向けて去っていった。    ***
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

236人が本棚に入れています
本棚に追加