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希望の波乱万丈の人生は、海の見える修道院で生まれたことで始まった。
修道院で祈りを捧げ、聖歌を歌う純潔の乙女を聖女という。希望の母は聖女だった。希望は男だったが、処女から生まれるという不可思議な出生と、生まれつき女神と同じ金眼を持っていたことから大切に育てられた。
希望はこの頃のことをほとんど覚えていない。覚えているのは、聖歌と波の音の子守歌が希望を包んでいたことだけ。淡く優しい思い出だ。
そんな希望に転機が訪れたのは、幼くして母を亡くした時だった。
本来なら希望は国外の遠い親戚に引き取られるはずだったが、希望の珍しい出生と金眼を利用しようとする地元の権力者とマフィアに阻まれ、修道院はやむなく田舎町の教会に希望を託した。
寂しさはあったが、小さな田舎町の古びた教会で、温和な老神父からの愛情を受け、他の孤児たちと一緒に過ごすうちにそれも薄れていった。
希望は第二の人生を歩み始めた。
希望は成長するにつれて母親譲りの歌の才能を開花させた。教会に響く金眼の少年の美しい歌声は小さな町では女神の祝福と同等に喜ばれた。希望も求められるままに歌い、人々の喜ぶ顔を見て満足していた。
しかし、いつしか噂は小さな町を超えて広がってしまい、再びマフィアの手が希望に迫る。
善良な老神父が圧力に屈することはなかった。しかし、日に日に憔悴していく彼を放っておけず、希望は教会を守るため、故郷を離れることを決意し、教会を飛び出した。
いくつかの街を経て、希望の境遇に同情した店主が『店を手伝ってくれれば部屋代はいらない、賄いも出そう』と提案してくれたので、今はこの街で暮らしている。
波の音や潮の香りがかつて母と共に平和に暮らしていた頃を思い出させる。そんな港町を希望は気に入っていた。
長い航海を乗り越えてきた船乗りや漁師の多いこの街にとって歌や音楽は、疲れを癒すものでもあり、明日を生き抜くための活力でもあった。天性の歌声と女神と同じ金色の瞳を持つ希望は受け入れられ、その金でなんとか暮らしていくことができた。
歌うのも喜ばれるのも好きだ。その上お金や贈り物まで貰える。希望にとっては良いことばかりだった。
……数日前、マフィアとの関係をちらつかせる男に目をつけられるまでは。
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