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誕生日プレゼント
僕が必死に悩んでいると、側へ来た殿下は僕の頭を撫でていた。
「ごめん‥‥‥。やっぱり、なんでもない。何もされなかった?」
僕が頷くと殿下はもう一度、僕を抱きしめた。
「心配させないで‥‥‥」
「はい‥‥‥。殿下、今日は私に何か用事があったのではありませんか?」
「ふふっ‥‥‥。そうだった。今日はステファンの誕生日だろう?」
「あっ‥‥‥」
「18才の誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
殿下はポケットへ手を入れると小箱を取り出し、僕へ手渡すと「開けてみて」と言った。
箱を開けると、中には青い宝石が埋め込まれたペンダントが入っていた。
「きれい‥‥‥。殿下と同じ青い瞳」
「私のモノっていう印。王家の紋章がココに入っているでしょう?」
「‥‥‥本当だ」
「着けてみる?」
「‥‥‥お願いします」
殿下は苦戦していたが、何とかペンダントは僕の首にかけられた。
「それと、その‥‥‥。今日、泊まっていかないか?」
「‥‥‥え?」
「いや、嫌だったらいいんだ。またの機会に‥‥‥」
(嫌じゃない‥‥‥。嫌じゃないけど、殿下は‥‥‥)
「殿下‥‥‥。私は、殿下のことが好きになってしまいました。こんな私では、殿下に相応しくありません‥‥‥。本当の想い合う相手とは、もうよろしいんでしょうか?」
「‥‥‥え?」
「え?」
「本当に想い合う相手って? ステファンの?」
「殿下の?」
「「え?」」
「いや、偽装結婚で‥‥‥。殿下は他に想いを寄せている方がいるんじゃないかと‥‥‥」
「何でそうなったの?」
僕は偽装結婚のために、殿下が僕と婚約したのでは無いかと思った経緯を話した。始めは真面目に聞いていた殿下も、終わりの方になると眉間にシワを寄せていた。
「誕生日プレゼント送ったの、初めてだったんだけどな‥‥‥。キスをしたのも、ステファンだけなのに‥‥‥。ステファンは違ったの?」
「いえ、私も何もかもが初めてで‥‥‥。殿下が慣れている様子だったので、私の他に何人かそういう人がいるのではないかと‥‥‥。本当に結ばれたい相手とは、立場があって結ばれない辛い立場なのではないかと‥‥‥」
「ステファン‥‥‥。たぶん、それ小説の読み過ぎだから」
「‥‥‥すみません」
「今夜は、忘れられない夜にしてあげる」
「えっ‥‥‥」
「ダメだ。今、決めた。私の愛を一生忘れられないくらいに深く刻み込んであげる‥‥‥。愛されてないなんて、二度と言わせない」
「ええっ?!」
「男爵家には私から遣いを出すよ‥‥‥。『ステファンは今日は家に帰りません』ってね‥‥‥」
(嘘だろう・・・レオン様、何だかよく分からない方向に吹っ切れちゃってるよ)
その後・・・宣言通り、僕はレオン様に朝まで愛され続けたのだった。
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