城への呼び出し

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城への呼び出し

 その後、殿下は呆然とした僕にキスをして部屋を出て行った。 (待って、待って、待って‥‥‥。僕には、何処まで本気で‥‥‥。他に何人恋人がいるの?)  僕はベッドの中で、しばらくそのまま蹲っていたのだった。 *****  数日後。僕は殿下から、城に呼び出しを受けていた。渡したい物があると言っていたが、殿下は忙しかったのか、結局は会えなかった‥‥‥。僕は中庭のベンチに腰掛けて、殿下の用事が終わるのを待っていた。 「あれっ‥‥‥。きみは‥‥‥」 「あ‥‥‥」  聞こえてきた声に振り返ると、そこには社交界デビューした時に、話しかけてきた赤髪の青年が立っていた。ここ数年で鍛えたのか、背は追い抜かされ、筋骨隆々とまではいかなくとも、ガッシリとした体格になっていた。 「驚いた‥‥‥。殿下と待ち合わせ?」 「‥‥‥はい」 「待っている間、僕とお茶しない?」 「え‥‥‥。はぁ」  赤髪の青年は確か伯爵令息だったはず‥‥‥。自分より身分が上の相手に、どうしようかと迷っていると、手を引っ張られた。 「おいで‥‥‥」 「あのっ‥‥‥。もうすぐ、殿下が‥‥‥」  赤髪の青年は、僕の手を引くと急に走り出した‥‥‥。廊下を進みながら、何回か曲がると近くにあった部屋へ連れ込まれる。 「あの、こんなとこで‥‥‥。お茶は‥‥‥」 「お茶より、もっといいことをしよう?」 「??」 「どうしたの?」 「あなたは‥‥‥。たしか、テオ・フォルトナー」 「今、思い出したの? 名前なんていいから、今を楽しもうよ‥‥‥」  テオ・フォルトナーは僕を抱き寄せると、腰を撫でていた。こんな時、怖くて声を出すことも出来なければ、逃げ出すことも出来なかった。 「何をしている!!」 「で、でんか‥‥‥」  部屋へ入ってきた殿下は、僕達を見て怒り狂っていた。僕が涙目で殿下の元へ駆けて行くと、殿下は僕を抱き寄せてくれる。 「貴様!!」 「やだなぁ‥‥‥。誤解ですよ。私がステファン様に誘われたんです」 「‥‥‥そうなのか?」  僕が首を横に振ると、殿下は魔物を見るような目で彼を睨みつけ、腰にある剣の柄を握っていた。 「不敬罪で、この場で切り捨てるぞ‥‥‥。私の気が変わらないうちに早く行け」  赤髪の青年は、青くなりながら走り去って行った。レオンハルト殿下は、ため息をつくと僕の方へ振り返った。 「それで‥‥‥。どうして、こんなことになっているの?」 「すみません‥‥‥。レオン様を中庭で待っていたら、『お茶をしよう』って、声を掛けられて‥‥‥。断れずにいたら、この部屋に無理やり連れて来られたんです。ビックリして‥‥‥。怖くて声が出ませんでした」 「全く‥‥‥。心配したんだぞ。連れ去られる君を見て、心臓が押し潰されそうだった」 「レオン様、申し訳ありません」 「何だか、ついて行ったようにも見えたしな‥‥‥」 「まさか、そんな事は‥‥‥」 「違うのか?」 「違います」 「なら、それをここで証明してくれ‥‥‥」 「証明?」
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