173人が本棚に入れています
本棚に追加
回想②
それから数ヶ月後。僕の元へ殿下から、婚約の打診の手紙が届いていた。友と言ったのに、何の冗談だろうか‥‥‥。しかも僕は、後を継がなければならない嫡男だ。
「自分の気持ちに、正直でいいんだよ」
男爵様には、そう言われた。断ってもいいのだろうか‥‥‥。そう思い、「僕が養子に来たのは、男爵家を継ぐためですから」と言って断った。
それから暫くの間、パーティーには出ずに勉学に勤しんでいた。
僕は殿下に、友と言われて嬉しかったし、友達だと思っていたのに、殿下は違ったのだろうか‥‥‥。
そんな時、殿下から手紙が届いた。今度、王家が主宰するパーティーへ来て欲しいと‥‥‥。
*****
数日後。訪れたパーティーには、たくさんの令息と令嬢が来ていた。同世代が多く、中には王立学園に通っていた時に、同じ講義を受けていた人達もいた。
パーティーが始まってすぐ、レオンハルト殿下の挨拶が始まった。
「本日は私の17才の誕生パーティー、並びに婚約パーティーへ来ていただき、ありがとうございます」
(えっ‥‥‥。婚約パーティー? 聞いてないんだけど‥‥‥。誕生パーティーだと思ってたよ。何なら、さっきプレゼント渡した時に、言ってくれても良かったのに‥‥‥)
「せっかく開いた婚約者選定のパーティーではありますが、私には既に心に決めた人がいます‥‥‥。ステファン・グランドール」
急に僕の名前が出て来て驚いた‥‥‥。何だか嫌な予感がする。
「‥‥‥はい」
「私のパートナーとして、共に生涯を歩んではもらえないだろうか? 決して楽な道のりでは無いかもしれない‥‥‥。だが、君の『英知と正しき心』があれば、これまで以上に王国を発展させることが出来るだろう‥‥‥。私と婚約してもらえないだろうか?」
(え? 養父であるグランドール男爵には「男爵家を継ぐから」と言って断ったハズなのに、どうしてこんな事に‥‥‥。これって、断っていいのか? 断れないパターンだよな? 殿下の面子を潰す訳にもいかないし‥‥‥。了承して、後で断るのもあり──だよな)
殿下は階下にいる僕の前まで来ると、片膝をつき手を取って僕の顔を見上げた。
「はい。謹んでお受けいたします‥‥‥。私でよろしければ、末永くよろしくお願い致します」
「‥‥‥」
殿下は感極まったのか、僕の手の甲に額を押し当てると、立ち上がって僕を抱きしめた。
「ありがとう‥‥‥。ステファン」
たくさんの黄色い声や歓声が聞こえた気がしたが、今の僕に気にしている余裕はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!