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診察
翌朝。
目が覚めると、今までの身体の火照りが嘘のように身体が楽になっていた。
階下から足音が聞こえ、ドアの開く音が聞こえた。顔を左に傾けると、そこには懐かしい母の顔があった。
「かぁさん・・・」
「ステファン・・・お前は、グランドール家の人間になったんだ。間違っても、『母さん』なんて、呼んではいけないよ」
そう言いながらも、母は僕の頭を撫でていた。気づけば母の後ろには、白衣を着た初老の男性が立っていた。
「あの・・・」
「今から、お医者様の診察と説明があるからね・・・大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です。よろしくお願い致します」
「ふむ・・・診せてくれ。ああ、口を開けて・・・どこか辛いところはないかね?」
「昨日は身体が怠かったのですが、薬を飲んだら楽になりました・・・その、殿下がいらっしゃいましたか?」
「「・・・・・・」」
「一昨日の夜中、血相を変えて店へ来てね・・・無下に出来なかったから、お通ししたよ。悪い人じゃなさそうだったしね」
「やっぱり、そうでしたか・・・」
「彼は、もしかして・・・」
「メイソン国の第2王子、レオンハルト殿下です。友人ですが・・・気にかけてくださったのでしょう」
僕が戸惑いながら話をしていると、医者は僕の側にある椅子に腰掛けた。
「いいか・・・落ち着いて聞くんだ。きみは・・・オメガ性だ」
「オメガ性?!」
「男性だが、子供を身籠もることが出来る・・・それとは別に発情期もやって来て、今回みたいに体調を崩すんだ」
「えっ・・・」
「銀髪は私譲りだけど、昔から人の目を引く綺麗な顔立ちで誰に似たのかって・・・父さんとよく話してたんだよ。養子の話が来た時、悩んだんだけど養子になった方が、お前にとって幸せな未来が訪れるんじゃないかって思ったんだ・・・戻ってきちまったけどさ」
「男爵様と奥様は、いい方達です・・・ただ、僕が逃げ出してしまったというか・・・」
「殿下かい?」
「はい・・・僕は、ずっと友達だと思ってたのに、婚約だなんて・・・裏切られたと思ったんです」
「裏切られたと思ったって・・・殿下に正直に話してみたらどうだい?それで、上手くいけば婚約解消してくれるかもしれないし・・・優しそうな人じゃないか。きっと不敬で縛り首に何てしないだろう、あの人は」
「縛り首・・・まさか、する訳がありません」
「一度、戻って話し合うんだね・・・それでも無理だったら、私の実家に匿ってもらえるよう頼み込んでみるさ・・・」
「ミヤ殿・・・ありがとうございます」
「幸せになるんだよ」
「・・・はい」
その後、医師から説明を受けた僕は、体調が良くなるまで実家で療養し、本国へ向けて馬車で帰ったのだった。
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