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裏切り
医師の診断を受けてから2週間後──馬車で家に帰り着いたと思って、扉を開けようとすると目の前は王城だった。
「えっ‥‥‥」
馬車のカーテンを引いていて気づかなかったが、扉の前にはレオンハルト殿下がいるようだ。
ここで扉を開けないのは変だと思い、思い切って扉を開けると、レオンハルト殿下は手を差し伸べて待っていた。
僕が手を取ると、ステップを踏む前に身体を持ち上げられ、身体を抱きしめられた。
「心配したんだよ‥‥‥。少し、痩せたんじゃないのか?」
「ご心配をおかけして‥‥‥。すみません」
「いいよ。ステファンが元気なら」
「あの‥‥‥」
「とりあえず、部屋へ行こうか?」
「‥‥‥はい」
レオンハルト殿下は嬉しそうに笑うと、僕の身体を持ち上げて横抱きにした。
「えっ、待ってください‥‥‥。これ、恥ずかし‥‥‥」
「君は、先日まで具合が悪かっんだ‥‥‥。これくらいのことはさせて?」
「‥‥‥はい」
通りかかる王城の人達の視線に耐えかねて、僕は顔を隠すようにレオンハルト殿下の首元に縋りついた。
「‥‥‥着いたよ」
応接室のソファーへ腰掛けるように促され、僕はソファーへ寄りかかった。侍従らしき人が紅茶を出すと、何も言わずに部屋を出ていった。
「グランドール男爵から、話を聞いたよ‥‥‥。婚約のことで、家を出て行ったんだって?」
「‥‥‥」
「怒ったりしないから、何があったのか話して?」
「養父が‥‥‥。いえ、私がいけないのです。裏切られたと思ってしまって‥‥‥」
「裏切られた‥‥‥。一体、誰に?」
僕は目の前にいる、レオンハルト殿下に裏切られたと思ったのだ‥‥‥。正直に話して大丈夫だろうか‥‥‥。殿下の顔を伺い見ていると、殿下は困ったように笑っていた。
話しても大丈夫だよ‥‥‥。都合のいい解釈かもしれないが、そんな笑いに見えていた。
「もしかして、私の事が原因だったりする?」
「‥‥‥」
「ねぇ、何があったのか話して?」
「‥‥‥‥‥‥私は、殿下のことは、ずっと友達だと思っていたんです。」
「‥‥‥もしかして、裏切られたってそういう事?!」
僕が頷くと、殿下は顔に手を当てて俯いていた。
「‥‥‥私の事は嫌い?」
「いえ。どちらかと言えば、好ましく思っています‥‥‥。友として」
「友として‥‥‥」
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