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友達同士
レオンハルト殿下は、僕の隣に移動してくると手を握って顔を近づけてきた。
「こうされるのは嫌?」
「‥‥‥いいえ」
「じゃあ、これは?」
レオンハルト殿下は僕の手を持ち上げると、手の甲にキスをした。
「恥ずかしいです」
「嫌だった?」
僕が首を横に振ると、レオンハルト殿下は抱きしめてきた。
「じゃあ、これは?」
「さっきは恥ずかしかったのですが‥‥‥。今のは、嫌じゃないです。何だかホッとします‥‥‥」
「それは‥‥‥。友として?」
「はい」
どう答えたら良いのか分からずに、殿下を見上げると顔がだんだん近づいてきた。避けなければいけないと思いつつも、僕は真顔で受け止めてしまっていた。
「これは?」
「‥‥‥キス?」
「そう‥‥‥。キスだね。嫌だった?」
僕は恥ずかしくなりつつも、首を横に振っていた。
「ステファン。これは‥‥‥。恋人同士がするものだよ‥‥‥。友達同士ではしない。意味は、分かるかい?」
「はい」
「僕のことは好き?」
「はい‥‥‥。友人として。恋人として好きかどうかは、分かりません」
「こんなに顔を赤らめて、そんな事を言うの? いけない子だね」
殿下は僕の腰を引き寄せると、再びキスをしてきた。さっきのとは違う、濃厚なキスだ。
「やっぱり婚約解消なんて出来ないよ‥‥‥。友達でいいから、側にいさせて? ステファン‥‥‥」
殿下は僕の腰に抱きつくと、上目遣いで僕を見上げていた‥‥‥。縋りつくような瞳に、僕は思わず頷いてしまっていた。
「‥‥‥それなら、構いません」
「たまに、君に愛を囁いてしまうかもしれないんだけれど、それは好きだから仕方が無いと思うんだ‥‥‥。それも許して?」
「‥‥‥分かりました」
殿下は僕に抱きつくと、再びキスをしていた‥‥‥。頤を掴むと口の中に舌を割り入れ、口腔内を蹂躙するように舌を絡めて吸い上げている。
「ぷはっ‥‥‥」
「ごめん。ちょっと、ガッついちゃった‥‥‥。友達としてのキスだから、許して?」
「でんかっ‥‥‥」
「どうしたの?」
僕はキスだけで、おかしくなりそうになってしまい‥‥‥。思考が戻ってくると、羞恥に身悶えながら殿下へ言った。
「キスは友人同士ではしないと、先ほど言っていたではありませんか?」
「それは、一般論だよ‥‥‥。愛の形が色々あるみたいに、友としてのあり方も色々あると思うんだ」
「‥‥‥はぁ」
「それに、さっき『キスは嫌じゃない』って言ってたじゃないか‥‥‥」
「それと、これとは話が‥‥‥」
「嫌だった?」
「嫌では‥‥‥。ありません」
「そう、よかった。これからも、友としてよろしくね、ステファン」
何だか上手く丸め込まれた気がしたが、殿下の機嫌が良かったので、それ以上は何も言えないまま‥‥‥。僕は男爵家に戻ったのだった。
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