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4.突然の訪問者
さくら様の妊娠報道が流れた。
これは村越家にとって、寝耳に水の出来事だった。
中村家からの報告も、さくら様からの連絡も、何もない状況でもたらされた。
お屋敷の使用人たちの間に流れた感情。
驚愕。
混乱。
不安。
懐疑。
動揺。
不信。
色んな感情が入り乱れる中、一番心が乱されたのは、社長ご夫妻に他ならない。
何故、我が子の身の上に起きた大きな変化を、報道で知らなければならなかったのか。
そもそも、さくら様との連絡手段が閉ざされているのはなぜか。
中村家の心無い対応に、ご夫妻の心労は計り知れない。
そんな状況でお屋敷が揺れ動いている時に、新たな出来事が起こった。
報道があった日の午後、お屋敷のチャイムを鳴らす人物がいた。
そのチャイムに出たのが俺だった。
「はい、どなた様でございますか」
すると、
「水瀬と言います。北川さんにお会いしたくてお伺いしました」
という声がした。
俺は胸が大きく脈打った。
「・・・水瀬様、ですか。恐れ入りますが、お引き取り願えますか」
これは、ご主人様が下されたご決断。
さくら様と引き離さなければならない人物。
「あの・・・?」
困惑した声が返ってくる。
「申し訳ありません」
それだけ言って、俺は通話を終了した。
その後北川執事長に報告をした。
すると北川執事長は、しばし考えを巡らせていたようだったが、意を決したようにこう言った。
「長谷川君。君に特別な頼みがあります・・・」
俺は執事長の表情に身構えた。
こんな執事長は見たことがなかった。
この後、何を告げられるのだろう・・・?
不安が胸を埋め尽くす中、俺は執事長の指示を受けたのだった。
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