2.ふさわしくなんてない

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2.ふさわしくなんてない

俺は、村越百貨店の社長邸宅に執事として仕える父と、花が好きな母との間に生まれた。 先代の時はまだ、使用人は皆、村越の邸宅で住み込みで生活していたので、幼いころの記憶は、村越邸の庭園で庭師を手伝う母と共に、花の手入れをしているというものだった。 俺が5歳になったころ、村越の家にお嬢様がお生まれになった。 それが、さくら様だった。 その後、創輔様が社長に就任された。 俺は母について回っていたので、村越邸の庭に入り浸り、庭師と仲良くなって手伝いをさせて貰っていた。 そんな頃、可愛らしくご成長されているさくら様と出会った。 幼いながらもお心が綺麗でお優しくて、庭にさまざまに咲き誇る花たちを愛する、心豊かなお嬢様。 多忙を極める社長ご夫妻ではあったが、さくら様に出来うる限りの愛情を注いでおられて、憧れのご家族だった。 俺は大学を卒業する前に、直接ご主人様とお会いして、お話しする機会を頂けた。 子供の頃から庭師と懇意にしていたこともあり、この頃には花に対しても知識を蓄えていると思えるようにまでにはなっていた。 そんなこともあり、百貨店のメンテナンス部の部長・・・装飾や生花をアレンジすることをご担当されている、奥様の執事としてお仕事を頂くことが出来た。 ある程度の知識はあると思ってはいたが、奥様の下でお仕えするようになって、更に花に関しての知識を深めることが出来た。 順調と思われていた村越家に、暗雲が立ち込めるようになったのは、さくら様が高校をご卒業される頃であった。 経営が傾き始めた際、ご主人様は新たな投資をなさっていた。 しかし、思いの外うまくいかず、苦心なさっていた。
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