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「ん?」
「いや、本当に今日の月は綺麗だな」
特別天体現象に興味を持っている訳ではないウーヴェですら綺麗だと感心してしまう月を見上げ、背中を覆ってくれる温もりに身体全体を預けるように力を抜くと、己の意図を察したリオンがしっかりと受け止めてくれる。
手にしていたステッキをバルコニーの床に倒し、お前が支えてくれるからそれは不要だと言外に伝えると、嬉しそうな溜息がひとつステッキの上に落ちる。
「うん。一緒に見れて良かった」
「そうだな」
冬の月は本当に美しいと珍しく感傷的なことを零したウーヴェにリオンが同意を示すように後ろから頬にキスをし、暫くの間二人でバルコニーで月見を続けるのだった。
リオンの腕の中にいる安心感と暖かさと月の美しさにバルコニーにいた二人だったが、リオンがくしゃみを連発したことに気付き己の身体もかなり冷え込んでいることに気付いたウーヴェが中に入ろうと促すと、リオンが鼻をグズグズ言わせながらウーヴェを抱き上げて心底驚いたような声を上げ、大急ぎで暖かなベッドルームに入ってベッドに下ろすと、ドアを閉めてブラインドも下ろしてウーヴェの身体にコンフォーターや毛布や冬用のガウンを被せて己もその隣に潜り込むのだった。
Der Mond.ーリオンとウーヴェー
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