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慶一朗が予想したとおりに絶品のディナーを食べ終え、今日は天気も良く日が沈んでからは気温も下がった為に庭で食後のコーヒーを飲もうと決め、庭のテーブルにマグカップを運んだ慶一朗は、一足先に庭でデュークを走らせていたリアムに声を掛けようとするが、何気なく空を見上げて小さく声を零してしまう。
「……あ」
そこには意識しないと見る事は無い満月が浮かんでいて、やけに今日の月は大きく美しく見えると感心してしまう。
双子の兄は星の研究に生涯を掛けている為に兄の自宅には天体観測が出来るツールが色々と揃っていたが、兄と違って慶一朗自身は、月など気が付けば空に浮かんでいるしあっという間に細くなったり丸くなったりするという認識しかなかった。
だが今夜の月は慶一朗の中の琴線に触れる何かがあったようで、マグカップを両手に持ったまま思わず月を見上げてしまう。
そういえばネットか何処かで月を綺麗だと褒めることで愛情表現をする男女の話を見かけた気がするのだが、月が綺麗だと言うだけでどうして己の愛情が伝わるのかがどうしても理解出来なかった慶一朗が思ったのは、好きなら好きと言えば良いとの思いだった。
そうして今度は視線を庭で犬と一緒に遊んでいる年下の伴侶へと向けると、己と違って感情表現も豊かなあの愛嬌のある笑顔を持つ男ならばその告白方法をどう思うのかと問いかけたい気持ちになるが、その告白方法はきっとする方とされる方の感性が同じでなければ正しく伝わらないことに気付き、己が咄嗟に思案したことに思わず苦笑してしまう。
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