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本当は日本で好きな喫茶店で好きなオーナーと働いていた方が苦労がなかったのに、この島に移住することを決めたと伝えた時、満面の笑みで一緒に行くと抱きしめてくれた時の事を思い出した総一朗は、何かの折に触れ双子の弟の慶一朗から、忙しいのは分かるがお前の都合に合わせてくれた一央のフォローを今まで以上にしてやれ、それが出来ないのなら日本に帰らせろと珍しく真っ当な意見で説教をされてしまい、その度に誰が帰すかと決して一央には見せることのない独占欲丸出しの顔で返事をしていたのだ。
それも自然と思い出した総一朗は、ベンチに頬杖をついて楽しそうに月を見上げる一央の頭にポンと手を乗せた後、開け放ったままの窓からリビングに入っていく。
唐突に己の頭を撫でた後に中に入っていく恋人の背中を視線で追いかけた一央だったが、戻ってきたその姿を見た時、驚きから目を丸くしてしまう。
「……ん? どうしたん?」
再び庭に姿を現した総一朗が両手に持っていたのは、大阪の家でも良く使っていた天体望遠鏡だった為、どうしたと首を傾げた一央は、ベンチの横に慣れた手つきで望遠鏡をセットする総一朗の動きを首を傾げたまま見守っていると、準備を整えたらしい総一朗が満足げに息を吐いてくるりと振り返る。
「……ここで月見をしないか?」
今日は満月でクレーターも良く見えていることから、望遠鏡を使えばもっと月面の様子が見えると笑う総一朗に一央が思わずベンチから立ち上がり、総一朗にしがみつくように抱きつく。
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