海を見ていた

1/1
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

海を見ていた

『乞うる海』より 海を見ていた午後 ペンギンたちは窓を開ける 北の海岸べりにある水族館 小さなペンギンたちは 南の氷海から来た ペンギン舎 壁はペンギンのふるさとを描いたのか 濃い水色の背景に氷山が描かれ 床は流氷の流れのよう 船の丸窓が 壁際に作られた岩山に沿うようにして 大中小3つ その中の一番小さい窓に ペンギンたちが集まっていた そこからは 間近に海岸線が見え、冬の海に いくつもの白波が 浜に、岸壁に打ち付けていた 変わりやすい季節の空は 荒浪となった波がしらに 雪混じりの雨を振らせていた 子どもたちの呼びかけにも応えず その荒れていく 海の様子を ペンギンたちは 窓辺に体を寄せ合って 見ていた あの窓は開けられるだろうか 開けて ペンギンたちの 原資の海 波高く、砕ける白波を蹴って 深く潜り 餌の魚たちと格闘したいのか ざわざわと 見知らぬ海の 荒れようを重ねて 思い出しているのだろうか 海を見ていた午後 ペンギンたちは窓を開ける
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!