みどり(影山飛鳥シリーズ01)

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第47章 いざ鎌倉 影山は楢本、鈴木、そして大庭とあの研究所に乗りこむことにした。そして、大庭の潜入調査での知識を活かして、怪しまれずに秋田と中野がいた研究室までは行くことが出来た。 「あれ? わざわざ昼食の注文に来てくれたの?」 そう言って研究室の所員は中に入れてくれた。 中に案内されたのは、大庭だけだったが、 続けて三人が入って来たので、その男がそれを制止しようとした。 それを振り切り、四人が中に入ると影山が入り口のドアの鍵を閉めた。 「え?」 その所員が事態が呑み込めないでいると、 影山が大庭に指示を出して、いつも食堂で被っている割烹着を脱がせた。そしてササッと髪を整えると、その中にいた所員全員に向かって叫んだ。 「私、殺された中野緑の妹です!」 え! という声もしたが、そこにいた所員は大庭の顔を覗き込んで、そして静止した。 「誰かに似てるって思ってたけど、中野さんだったんだ。」 そんな声も聞こえた。 全員が静まり返ったところで、そこで影山がしゃべりだした。 「みなさん聞いて下さい。」 一同が大庭から、影山に向き直した。 「この研究所に謎の危険な植物があります。 詳細は不明です。おそらく未知のものでしょう。」 いったい何が始まるのかと一同集中していた。 「その植物が原因で、その植物によってここの室長だった秋田さんが殺されました。」 え・・という囁きとともに、 ええ! という大声が聞こえた。 「そしてそれに続いて、ここにいる彼女のお姉さん、つまりこの研究室の中野さんも殺されたのです。」 みんながかたまったのがわかった。 「私たちは今日、それを暴きにここに来ました。」 ここの研究室の所員に積極的に協力してもらうつもりはなかった。しかし、まずはここを拠点にして、怪しいと思われるところに乗りこみたかった。拠点にするにはこの行動を黙認して欲しかった。そして怪しい部署を知るには少しでも彼らの助言が欲しかった。 しかし、彼らはどうしたらいいかわからないという戸惑いの顔をして、四人に協力を申し出た者はひとりもいなかった。 「やっぱりダメか。」 そう影山は口にはしたものの、それは想定内のことだった。とりあえずここに籠城しているわけにもいかず、その場を出ようとすると、誰かが影山の背中に触れたのを感じた。 「私、秋田室長にはとってもお世話になったんです。それに、みどりとは同期で親友でした。」 影山は笑顔で振り返った。 「私、案内します。ついて来て下さい。」 四人は大迫やよいの後について人事部へ向かった。人事部の近くのトイレに一旦身を隠すと、 ここで待っていて欲しいとやよいに言われた。 しばらくそこで待っていると、やよいは一人の女性を連れて来た。 「私の同期の・・みどりの同期の、小川さんです。」 トイレで六人が話を始めた。 「影山と言います。時間がありません。 人に見られると不審に思われますから。」 「やよいから聞きました。みどりの亡くなった後、 二人できっとみどりの真相を暴こうって誓ったんです。」 やよいと小川が向き合ってうなずいた。 「私も独自に調べていました。最近頻繁に怪しい運送会社が出入りしてた部署があります。」 「それって怪しいんですか?」 「何かを隠しながらコソコソとトラックから降ろしたり、積んだりしてました。」 「何かを・・ですか。」 「搬入の担当から・・彼も同期なんですが、 同期会で聞いたんです。なんか怪しいって。」 「そうですか。」 「でも次の同期会ではそんな話知らないって。」 「なるほど。」 「それが怪しいっていうことですよね。」 「それはどこですか?」 「案内します。」 六人で行動しては目立つということで、そこでやよいが離脱した。小川は残った四人をその部署に案内した。四人は迷路のような通路をしばらく小走りに進んだ。そして最後に階段を下り、一階に行くと、「そこがそうです。」と小川が指を差して目の前の一室を示した。 そこは温室が設置されたガラス張りのラボになっていた。中をよく見ると何やら植物が栽培されている。 「わかりました。あなたは戻って下さい。 後は大丈夫です。」 影山は視線をラボに向けたまま小川にそう告げた。 小川が静かに職場に戻って行くと、楢本、鈴木、大庭に目配せをして、ゆっくりとそのラボに向かった。
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