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第18章 楢本の失態
楢本が向かった先は、中野にストーカーと間違われた新大久保のマンションだった。
秋田が住んでたそのマンションに、秋田を女が訪ねて来なかったかを聴き込みに来たのだった。
秋田に関する防犯カメラの映像はことごとく警察に没収されていたので、その線からの情報収集は無理だった。
そこでご近所さんに、謎の女の存在を確認に来たのである。
今回もオートロックの壁に阻まれながら、
各部屋と会話の出来るインターフォン越しに楢本は、色々な部屋に聴き込みをした。
しかし、どの部屋からも楢本の問いかけに応える者はいなかった。
何かの押し売りにでも思われたのだろうか。
この方法は失敗だなと、マンションを出ようとした時、楢本の真横を中野が通り過ぎて行った。
中野さん、疑いは晴れましたか?
そう言いかけて、中野があまりにこちらに反応がないことに、楢本はその女に不信感を抱いた。
中野ではない?
その女はサッと暗唱番号を入力すると、
オートロックのドアの向こうに行ってしまった。
楢本が、あっと思い、その女の後を追いかけたが、目の前であのいまいましいオートロックのドアが閉まった。
楢本は何か直感が働いた。
あれは中野ではない。
でも中野に似ていた。
楢本はマンションの外に出て、その周りをぐるりと回って、非常階段を見つけると、そのドアのノブに手を掛けた。
しかし、それは、内側からカギが掛っていて、
楢本の行く手を固く拒んだ。
あの女・・。
中野に似た女、何をしにここに来たのだろうか。
ここに住んでいるのだろうか。
しかし、それを確かめることが出来なかった。
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