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第35章 手紙
私がその手紙に気がついたのは、
職場の同僚の送別会の時で、
お化粧を直しにトイレに行った時でした。
バッグの中に何やら見なれない封筒が入っていたので、一瞬、何? と思いましたが、それを個室に持ちこんで、中身を開けてみたのです。
お酒が入っていたせいかもしれません。
変ないたずらかもしれないし、気持ち悪いとも思ったのですが、勢いで開けてしまいました。
けれどその中には普通の便箋がきちんと入っていて、変なものじゃなかったんだと安心したのですが、その文面を読むと、
「あなたの本当のお父さんを知ってます。
明日午前7時に研究所の植物園で待ち合わせしましょう。」
と書かれてあった。
私はいたずら? と思ったのですが、本当のお父さん・・・私が養子であることを知っている人が、あの職場にいるんだとわかると、ちょっと怖い気持ちになりました。
私の生い立ちに関して知っているということは、
戸籍からはそれがわからないようにしてあるのだから、関係者以外にはありえないと思ったからです。
そんな人が何故あの研究室に? と思いましたが、同時にこの手紙が何を意味するのか、私を呼び出していったい何を伝えたいのか怖くなりました。
私は極力冷静を保って、宴会場に戻りましたが、
酔いはすっかりさめて、もう何も喉を通りませんでした。
この中にこの手紙を忍び込ませた人物がいる。
そう思うと、明日からの私の姿勢を変えなくてはならないと思いました。
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