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第39章 室長の死
私は室長が亡くなったことを、その翌日に知らされた。
その日いつものように研究所に向かうと、
入口のところが何やら騒々しかった。
警備員のおじさんにどうしたの? という顔を向けると、「なんでも誰かが殺されたらしいよ。」という言葉が返って来た。
私はいつ、どこで、誰が・・・と思ったけど、
その警備員のおじさんの様子ではそこまでわからなさそうだったので、急いで自分の研究室に向かった。
研究室に入るなり、そこに見なれない男達が数人かたまっていたので、私は殺されたのはうちの研究グループの所員だと直感した。
「みどり・・室長が殺された。」
同僚のやよいが私にそう告げた。
え?
室長が?
何故?
それから私たちは別室に一人ずつ呼ばれて、
そこで室長のことを色々と聞かれた。
けれど私はこの研究所に新卒で入って、まだ数か月だったし、室長と話をしたこともほとんどなく、何も室長のことを知らなかった。
「最近、室長に変わったことはなかったですか?」
「気がつきませんでした。」
「室長は突然退社をされて、それで青木ケ原で死体になって発見されています。」
私にはまるで意味不明な行動だった。
「昨日お休みだったようですが・・。」
え・・・疑われてる?
「前の晩が送別会で飲み過ぎてしまって。」
「ははは・・そうですか。」
疑ってるわけでもないんだ。
「送別会というと、誰のですか?」
「佐々木さんの送別会です。」
「こんな時期にですか?」
「はい。」
・・と言っても今の時期が普通なのかどうか、
新人の私にはよくわからなかった。
「佐々木さんと室長とはどんな感じだったのですか?」
「どんな感じとは?」
「仲がいいとか、よく口論をしていたとか。」
え・・佐々木さんを疑ってる?
私は慎重に、そして正直に答えた。
「こういう職場なので、たまにデータに関して色々と意見を交換し合うことはありましたけど。」
「データというと検査結果について、議論を交わしていたということですか?」
「はい。」
「時にはエキサイトしたり?」
「うーん・・。」
「わかりました。ありがとうございます。」
警察は転勤していった佐々木さんに何かを感じたのかもしれない。
私が即席の取調室から出て来ると、やよいが駆け寄って来て、私の耳元で囁いた。
「私、室長がみどりのバッグに、何か手紙みたいの入れるのを見たんだけど何か聞かれた?」
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