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第40章 秋田と中野
中野は室長のことを調べた。
自分の本当の父親のことを知ってる人物。
両親以外でそのことを知ってる人物の存在を初めて知って、それは大きな興奮に襲われた。
しかし、その室長は殺されてしまった。
なぜ?
そして、私の本当の父親は誰なのか。
室長が亡くなった今、その興奮は大きな落胆に急変していった。
室長ってどんな人だったのだろう?
私は初めて彼に興味を抱いた。
そして、そう言えば何度か私のことを見つめる目に遭遇したことを思い出した。
あれは管理職の目・・・そう思ってた。
でも今思うと、それよりも優しさが込められていたような気もする。
優しい管理職の目?・・・
そういうのもありかもしれない。
けれど、秋田室長のプライベートがわかれば、
何か私の父の情報につながるのではないかと、
私はまず同僚からその辺りを探ってみることにした。帰りにやよいを誘った。室長の噂話と言うと彼女は一も二も無くついて来た。
「室長って独身だったんだよね。」
それは私も知っていた。
私はやよいにビールをじゃんじゃん注いだ。
「ずっと独身なの?」
「うーん・・結婚してたっていう噂。」
彼女は私の同期の中で一番の情報屋。
うちの研究グループは勿論のこと、他の棟の研究グループのことまでかなり詳しく情報を集めていた。
「そうなんだ。」私は一応相槌を打った。
いや室長のそういう話じゃなくて、
室長の男友達の話を聞かなくてはいけない。
「男友達? え・・室長がゲイかってこと? まさかぁ。」
そういう話でもないんだけど。
「そういえば、昔に研究室で働いていたっていう女性が、赤ちゃんを見せに来たことがあって・・。」
「うん。」
「室長が抱かせてみろって言って抱いた時にね・・。」
「うん。」
「俺にもこんな子がいたんだよなぁって言ってたことがあって・・。」
え?
「あー、室長の隠し子ですか? って盛り上がったことがあった。」
「ええ!」
「だから、ゲイじゃないよ・・って、あれ? 結婚してたってことかな? なんか私変なこと言ってる?」
室長に子ども? 今は独身・・。
私の父を知っている?・・・。
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