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第4章 らせん屋
たまたま近くに来たので、今日は初めてのランチ。
いつもは予約をしてあの席をキープしてもらっているんだけど、今日は予定外だったので、きっと誰かがあの席に座っている。
ちょっと嫉妬が働くけど、その一方で、普段私がいない時にはどんな人があの席に座っているのか、秘かに見てみたいという、そんな衝動にかられた。
一番奥のあの席には、若い男性が座っていた。
中肉中背。身長は175センチくらい。
髪は短く、メガネをかけている。
靴はテカテカに光ったやっぱり上質の革靴で、
横に無造作に置かれた手持ちカバンは、上質なワインレッド色の皮製のものだった。
私があんまり凝視しているから、その人がこちらを一瞬見た。私は目が合わないように、その近くのテーブルについた。
今日の私のオーダーは、まさか昼間からアルコールを飲むわけにもいかないし、フレッシュなぶどうジュースと、南欧風子羊のハンバーグにした。
この子羊のハンバーグ、食べ終わるまで中がアツアツで、美味しさがずっと逃げないで閉じ込められている。ランチならこれってずっと前から決めていた。その料理にやっと今日会えて、大満足。
私がその料理を食している時に、あの席の男性が会計を済ませて帰って行った。その時、マスターと一言二言話をしていたので、おそらく常連の一人なのだろうと思った。当たり前だけど、このお店を気に入っているのは私だけじゃない。
会計の時に、何気に彼のことをマスターに聞いてみた。私がいない時にあの席に座る彼はだあれ?
「あ、彼は探偵さんですよ。」
「探偵ですか?」
意外な答えだった。
「ええ。」
「お名前は?」
「影山・・影山飛鳥さんです。」
私は探偵という言葉にひっかかった。
前に住んでいたあの市でのあの事件、解決してもらえるかなあ。
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