みどり(影山飛鳥シリーズ01)

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第4章 らせん屋 たまたま近くに来たので、今日は初めてのランチ。 いつもは予約をしてあの席をキープしてもらっているんだけど、今日は予定外だったので、きっと誰かがあの席に座っている。 ちょっと嫉妬が働くけど、その一方で、普段私がいない時にはどんな人があの席に座っているのか、秘かに見てみたいという、そんな衝動にかられた。 一番奥のあの席には、若い男性が座っていた。 中肉中背。身長は175センチくらい。 髪は短く、メガネをかけている。 靴はテカテカに光ったやっぱり上質の革靴で、 横に無造作に置かれた手持ちカバンは、上質なワインレッド色の皮製のものだった。 私があんまり凝視しているから、その人がこちらを一瞬見た。私は目が合わないように、その近くのテーブルについた。 今日の私のオーダーは、まさか昼間からアルコールを飲むわけにもいかないし、フレッシュなぶどうジュースと、南欧風子羊のハンバーグにした。 この子羊のハンバーグ、食べ終わるまで中がアツアツで、美味しさがずっと逃げないで閉じ込められている。ランチならこれってずっと前から決めていた。その料理にやっと今日会えて、大満足。 私がその料理を食している時に、あの席の男性が会計を済ませて帰って行った。その時、マスターと一言二言話をしていたので、おそらく常連の一人なのだろうと思った。当たり前だけど、このお店を気に入っているのは私だけじゃない。 会計の時に、何気に彼のことをマスターに聞いてみた。私がいない時にあの席に座る彼はだあれ? 「あ、彼は探偵さんですよ。」 「探偵ですか?」 意外な答えだった。 「ええ。」 「お名前は?」 「影山・・影山飛鳥さんです。」 私は探偵という言葉にひっかかった。 前に住んでいたあの市でのあの事件、解決してもらえるかなあ。
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