27人が本棚に入れています
本棚に追加
第44章 大庭と影山
大庭はこの話をいつも何かとお世話になっている探偵に相談した。
しかし、その探偵は、とても自分の手には負えそうもないと言い、代わりにグリンエア探偵事務所を紹介した。大庭は早速その事務所を訪ねた。
そこで大庭は楢本と再会した。
楢本が目を白黒して自分を見ていたので、楢本を少し不審に思ったが、もしかしたら緑の知り合いではないかとそのままにした。
また影山も大庭の出現にびっくりした。
しかし、中野のマンションに出入りしていた理由や、更にはあの植物研究所の付近で消えたことについては、何も聞かなかった。それは既に調査を進めていて予想がついていたからである。
大庭は中野の双子の姉妹であるということ、
そして秋田とは親子であるということ。
あの研究所には秋田と中野が勤務していたことは調べがついている。
大庭は行き別れた家族の近くにいたかった、
そして出来たら家族だと名乗りたかった、
そんなところではないかと読んでいた。
「樋口君のご紹介だということで。」
「はい。樋口さんには色々なことでお世話になっています。」
「色々なこと?」
「はい。仕事関係のことでも。」
「どんなお仕事ですか?」
「ルポライターです。」
「ほう。」
「影山先生には全幅の信頼を寄せていいと、樋口さんから言われてます。」
影山も樋口には絶大な信頼を寄せていた。
彼からの紹介だということは、先ほど樋口からの電話で確認していた。
樋口からの紹介・・・
それはこの山がかなり危ないということを意味していた。
「私に探ってほしいのはどんなことですか?」
影山は単刀直入に大庭に尋ねた。
「植物の研究所の重大な秘密です。」
「え?」
「そこで大量の猿が死にました。そしてその原因が植物らしいんです。」
「続けて。」
「その研究所には父が働いていました。その父が殺されたのも、もしかしたらそのことが原因かと。」
「じゃあ、あの研究所が?・・。」
「ご存知ですか?」
「一応探偵ですから。」
「そしてその研究所に姉も勤めていました。」
「じゃあ、お姉さんの死もそれが原因と?」
「はい。」
「しかも、その研究所にいま私は食堂の調理員として潜入しています。」
「ああ!」
だから、あの付近であの時消えたのか・・と
その時影山は初めて知った。しかし研究所の食堂まで調べるということは思いも寄らなかった。
鈴木もなんとなくパズルが完成したような気がした。
しかし、影山はたいへんな依頼をされてしまったと思った。あの二つの殺人事件が絡む大きなヤマ。一瞬断ろうかと思った。
けれど自分たちが関わった秋田の事件に、更には中野の事件もその研究所の秘密に絡んでいるらしい。
鈴木の方をちらっと見ると、彼女は首を横に振っている。しかし、影山は断れなかった。
大庭は秋田から届いた手紙を影山に差し出した。
最初のコメントを投稿しよう!