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第50章 終
「影山さん、その通りでした。」
「前田さん、そうであって欲しくはなかったのですが、やっぱりそうでしたか。」
「はい。」
「でも、どうしたらいいでしょう。」
「どうしようもありませんね。だからこれは世間には公表を出来ません。」
「え? せっかく証拠が見つかったのに。
あなたの論文が世界中から大絶賛されるかもしれないのに。」
「こんなこと発表したらパニックですよ。」
「ですか、残念ですが。」
前田の論文では、あの事件は、あの植物特有のものではなくて、多分植物全種が持っている能力であると書かれていた。そうであればいつ自分の家の庭の雑草が、あの能力を発揮するとも限らない。
しかし、私はそうは思わなかった。
それは中野が亡くなった現場には、雑草一本生えていなかったということと、もし見落としたものが仮にあったとしても、あの場にいた楢本や他の通行人が無事でいられたのが不思議だったからだ。
さて、私が彼に調査を依頼したことは・・。
この凶器・・と言うか真犯人は誰かということだった。そして前田のチームの研究結果が、やはり、私の予想するところとなったという報告を受けたのである。
それは、やはり真犯人は「みどり」だということだった。
しかしその「みどり」はそこらじゅうにたくさんある「みどり」で、しかもそれは私たちの体の中にある「みどり」だっただからである。
そう、私たちの細胞のひとつひとつの中にある「みどり」、つまりミトコンドリアが反乱を起こしたのである。
私のヒントで前田のチームが今も入院中の所員の細胞を検査した結果、容態が悪くなった時に抽出した細胞ではミトコンドリアから、わずかながらのアルカロイドが検出されたというのだった。
そして体内から取りだした細胞にストレスに似せた強い電気を流すと、その量は致死量を遥かに超えたということだった。
私はこの話を前田から聞くと、事件簿に「完結」の印を押して、そして金庫に閉まってしまった。
翌日、鈴木が「みどり事件」の事件簿がないと叫んでいたが、私は聞こえない振りをしていた。
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