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対人スキル999
「花実来さん、セミナー頑張ってね」
「手伝うことがあったら言ってね」
花実来さんの交友関係は概ね良好である。男性メインであることは否めないけれど、アザとさ、いや、対人スキルの賜物であろう。
「さすがだね、花実来さん」
「もしかして妬いてます?」
「何を?」
スターチスの花のようにいたずら心を宿した目でふふっと笑う花実来さん。いや、ないからね。
「花実来さん、君ならできるよ。君を信じてるよ」
今度は高級そうなスーツを着たおじさんが声をかけてきた。
「今の誰だっけ?」
聞こえないように姿が見えなくなってから花実来さんにそっと聞いてみた。
「常務ですよ。」
しれっと当たりまえのように答える花実来さん。
「常務がなんで!?知り合い?」
思わずコーヒーを吹きこぼしてしまった。いや、たかがセミナーですよ。これ、年4回やるセミナーですよ。しかも、全国で開催してますよ。37都道府県×4回現地に回ってるんですか?そんなわけないですよね。
「いえ、ハリネズミの生態について調べてたら意気投合しちゃって。」
いや、意気投合したぐらいで常務がわざわざ本社から来るか?
「は、花実来さん。電話です。」
こっしーが何やら見るからに慌てている。クレームかな?フォローが必要かもしれないと思い気を引き締めると。
「う、う、宇宙飛行士の高橋さんからです。」
宇宙飛行士の高橋さんといえば、つい先日宇宙に旅立ったばかりのはずだが。どこから電話してるんだろう。
「乗り物酔いにきくツボ教えてあげるから、頑張ってね。私もセミナー頑張るよ」
いや、まさかの宇宙からの電話。それにしては内容が軽すぎる。
あざとスキルの賜物なのか、花実来さんの交友関係がすごすぎる。
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