プロローグ

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プロローグ

 春。桜の花が空を舞い、希望に胸が高鳴るその季節。一人の女性が仕上げのチークを頬にいれる。ふんわり上気したような、愛らしくも上品に。そう、桜の花びらのように可愛らしくみんなから愛される。 「いえ、みんなでなくてもいいのです。私が愛されたいのはあなた一人」 女性は鏡に向かってにっこり微笑んだ。目が一番大きく見え、顎はしゅっと、鎖骨のラインがさりげに華奢に見える、何度も練習したその角度で。  花実来果恋。今日が初出勤である。
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