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「お嫌いなのに焼いていらしたの? どうして……?」
「さぁ? どうしてでしょう? 一葉さん分かりますか?」
分かりません……という言葉は飲み込んだ。心の中では浮かんだがそれを口に出すのはなんだかまずい気がした。
「一葉さん、分からない? 本当に?」
「ええ? ええと……その……」
なんだろう、この人。さっきから会話がかみ合ってない。かみ合っていないというか、腹の中を探られているような座りの悪さを感じる。
覆面をしていて表情が読み取れないから余計にそう感じるのかもしれない。栗色の髪に、目じりは細長くシャープな雰囲気が余計にそのミステリアスさを醸し出していた。
長身でがっしりとした筋肉質な体格はしているが着物から伸びる手足をみると一葉よりも白いのではないかというほど肌が白い。だが、か弱い印象は全くなくこうして隣に立ってみる威圧感に圧倒されそうになる。
「ねぇ、どうしてだと思う?」
保胤は一葉の方へと身を乗り出した。しゃがみ込むように顔を近づけ、瞳の奥を覗き込む。吐息が掛かるほど距離を詰められ一葉は息を飲んだ。
「え、あ、あの、それは、その……!」
「うん?」
「も……燃やしたいほど………………嫌い、だから……?」
「……………………ぶはははははははっ!」
長い沈黙の後の突然の爆笑に一葉の肩がびくりと跳ねる。
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