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「さ、さすがの! 僕も! そこまでサディスティックじゃ……あはっ! あははは!」
保胤はお腹を抱えて笑い転げる。一葉はぽかんと口を開けていた。
「あらあら、睦まじいこと~」
三上がシルバーのトレイにお茶を準備して戻ってきた。
睦まじい……? どこが……?
一葉は困惑したが、三上の登場にほっと胸を撫でおろした。
その後、焼いた芋は三上も一緒に食べた。保胤は手を付けず、少し離れたところで煙草を吸っていた。マスクを外しているようだったが、離れていることもあり全貌までは見えない。
「保胤様は怒っていらっしゃるのでしょうか……突然押し掛けて来て……」
並んで焼き芋を食べながら、一葉は恐る恐る三上に尋ねた。
「そんなことはございません! 保胤様は一葉様がいらっしゃる日をずっと待ち望んでいらっしゃいましたよ。こうして緒方家に来てくださることになり私も嬉しゅうございます」
「三上さぁん……!」
「あらあら~」
三上の言葉に、一葉は思わず涙ぐむ。他人からこんな優しい言葉をかけてもらえるなんていつぶりだろう。優しい。すでに大好き、三上さん。
確かに今回の縁談は緒方家の方からの打診だったと慶一郎は言っていた。保胤が一葉を気に入っている、ぜひ縁談をと緒方家の使いの者が喜多治家へ訪れた。
慶一郎はこの縁談を大層喜んだ。何故なら、この縁談こそが一葉を養子に向かい入れた最大の理由だったからだ。
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