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「一葉様、どうぞ」
三上がティーカップを一葉の前に置いた。金彩模様が美しく、高級感溢れる佇まいをしていた。
「保胤様もお紅茶いかがですか~!」
遠くで煙草を吸う保胤に三上は声を掛ける。保胤はその声に気付いて手をあげ反応した。戻ってきて一葉の隣の席についた。
(焼き芋に紅茶ってだけでも凄いのにこんな華やかなカップ初めて見た……)
出された紅茶に感動と、上流階級の生活レベルの凄さに戸惑いを感じながら一葉はカップに口をつけた。落とさないよう慎重に。
「あ……!」
一葉は目をパチパチさせて、カップの中の紅茶をじっと見つめる。
「……どうかされましたか?」
保胤に尋ねられて一葉は焦った。
「あ、ええと……!」
「お口に合いませんでしたでしょうか……?」
三上も心配そうに一葉の顔を見た。
「あ……い、いいえ! あの、とてもおいしくて感動してしまいました!」
一葉は焦りながら再びカップに口をつけた。
(懐かしい……)
紅茶の味と思い出が一葉の胸に去来する。
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