3:旦那様のお好み

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3:旦那様のお好み

 庭でしばらくお茶を飲んだ後、屋敷の中を案内された。  洋館は外観もさることながらその中も非常に豪華な作りだった。広々とした空間と調度品に溢れ、まるで美術館のようだ。  玄関だけで一部屋分ありそうな広さに高い天井。意匠を感じる照明に、モールディングの装飾が施された壁。豪華だが上品で静かな佇まいを感じる。  靴のまま生活をしていると三上から説明を受けたが、床はどこもかしこもピカピカに磨かれ顔が映るほどだった。 「そして、こちらが一葉様のお部屋になります。ベッドはございますが、まだ鏡台など必要なものが揃っておりませんで……しばらくご辛抱くださいませ」  三上が申し訳なさそうに頭を下げる。 「いえ、おかまいなく!」  案内された部屋は10畳ほどの洋室だった。セミダブルのベッドがひとつに、サイドボードが備え付けられたシンプルな部屋だったが大きな窓から日の光がよく入る、明るい部屋だった。   「お疲れになられたでしょう。お夕飯まで時間がございますからゆっくりおくつろぎください」  そういうと、三上は部屋を出て行った。  一葉は鞄を床に置いて部屋の窓を開けた。二階に位置する一葉の部屋から先ほど焼き芋をした庭が見えた。敷地内には他にも庭があるようで、花が咲いているところも見える。  一葉は深呼吸した。肺に広がる澄んだ空気が心地いい。 「……よし」  自分を鼓舞するかのように一葉はひとり頷いた。
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