3:旦那様のお好み

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 広い食堂で三上と共に一緒に食事をとった後、三上は帰っていった。  敷地から近くにある家屋に住んではいるものの住み込みの使用人ではないようだ。一葉は三上が準備してくれた風呂に入った後は自分の部屋で休んでいた。 「はぁ……」  べランダの窓を開けて、夜空を仰ぎ見る。空が広い。喜多治家で過ごしていた自室とは大違いだ。一葉は屋敷の離れの物置小屋をあてがわれ、三年間そこで過ごした。窓はなく埃っぽい物置小屋から、こんなホテルの一室のような清潔な部屋で過ごせるようになるなんて思いもしなかった。  保胤のことはまだどういう人間か分からないが、使用人の三上はとてもいい人だ。彼女を悲しませるような真似はしたくないと思っているが、これから起こる緒方家の騒動に巻き込まれることになるのだろうかと思うと、胸が痛んだ。  一葉は窓辺から離れ、持ってきたトランクケースを手に取る。ダイヤルを回して暗証番号を合わせると、ガチャリと物々しい音と共にケースが開いた。着替え、下着、櫛、父と母の写真といくつかの少ない私物の下に隠したものを手に取る。 (やるなら今がチャンスよね……)  一葉が取り出したものは盗聴器だった。
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