1005人が本棚に入れています
本棚に追加
4:旦那様が居ぬ間に
盗聴器は全部で五つ。問題はどこに設置するかだ。
三上から館の部屋は一通り案内を受けた。もちろん、保胤の自室の場所も。
「あの……保胤様は普段どのようにお過ごしになられていますか? 私がこちらに住むようになっても保胤様には気兼ねなく普段通りの生活をお送りいただきたくて……邪魔をしないようにしたいと思っているんです」
広い館を案内してもらっている最中、一葉はもっともらしい言い訳をしながら三上に尋ねた。
「邪魔だなんてそんな……保胤様は一葉様がいらっしゃるのをずっとお待ちだったんですよ」
そうかなぁと一葉は腑に落ちなかった。
焼き芋は嫌いだなんて小さな嘘をついたり、こちらの腹を探るような言動をしたり、どちらかというと保胤からあまり良い印象を持たれていないのではと感じているからだ。
「それは嬉しゅうございますが、保胤様のことまだ何も分からないものですからどのように過ごされるのか知りたいんです」
保胤にまつわる情報を引き出そうと一葉は食い下がる。
「そうですねぇ……その日によって異なりますが平日ですと基本的に日中は会社へ、お帰りになられてからは書斎と寝室でお過ごしになることが多いです」
「お休みの日は何を?」
「お庭で読書をされたり煙草を吸っていらっしゃることが多いです。あ、お茶がお好きな方なのでよくお庭で嗜んでいらっしゃいます」
「……あまりお出掛けにならないのですね。私も家でのんびり過ごすのが好きなのでお気持ちわかるような気がいたします」
「元々出不精な方で休日はここでひとり過ごされることが多いのです。だけど、一葉様がご一緒なら三上も嬉しゅうございます!」
一葉は三上に笑顔を向けつつ心の中では肩を落とした。
私、亭主元気で留守がいい派なんだけどなぁ。
三上とのやりとりを思い出しながら一葉は五つの盗聴器をどこに設置しようかと考える。
書斎、主寝室は絶対。応接間があったからそこにも。読書の場として保胤はサンルームもよく行くと三上は言っていた。
(最後のひとつは……保胤様の行動範囲を見て考えよう)
最初のコメントを投稿しよう!