4:旦那様が居ぬ間に

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 そっと自室の扉を開けて辺りを見渡す。この広い館に今は自分しかいないと分かっていても、やはり緊張する。  シンと静まり返った廊下をオレンジ色の照明がぼんやりと照らしていた。一葉は螺旋階段を降りて、まずは一階の応接間へと向かった。  応接間は階段ホールのすぐ隣にあった。20畳ほどの大部屋で天井が高く、解放感があった。壁は白い漆喰で塗られて床は寄木張り。椅子が六脚に濃いブラウン色の長方形のテーブル、天井からはブロンズ色のシャンデリアが下がっていて、趣のある上品な部屋だった。一葉は人の目につきにくく、かつ音声が拾いやすい場所を探す。 (あれだ……)  部屋の隅に置かれた脚付きの箪笥に目をやる。ステンドグラスのランプが置かれていた。シェード部分を素早く外し、電球にくっつけて盗聴器を仕掛けた。  次に、サンルームへと向かう。サンルームは食堂を通り抜けた先にあった。 「わぁ……」  一葉はその絶景に気をのむ。そこはまるでプラネタリウムだった。
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