26:旦那様と海と紅茶②

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「え……抱……ッ……え……と」  顔が一気に赤くなる。 「これまであなたの身体に何度か触れてきたけれど、僕達一度も結ばれていないでしょう?」  保胤のいう通り、これまで一方的に触れられるだけで最後まですることはなかった。一葉が酔っぱらい粗相をしてしまい未遂に終わったことはあったが、それ以外はただ快楽を与えられるだけで保胤自身を解放する時は一度もなく、一葉自身、そのことを少し気にはなっていた。  男女の閨事(ねやごと)がどういうものか、経験したことはなくとも知識としては知っている。  保胤が最後までしないのは、自分を裸にしてみたもののそんな気にならなかったからだと思っていた。手慰み程度に自分に触れるだけなのだろうと。 「最後の思い出にしたいんです。あなたを妻としてこの手で抱きたい。愛したいんです」 「そ、そんな何度も言わなくても……」  念を押すように何度も請われると余計に恥ずかしさが増して、うんと頷きづらかった。
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